婚カチュ。


「それじゃあ、今日はこれで」

「はい、これ、ありがとうございました」
 

どういたしまして、と微笑んで、戸田さんは地下鉄の階段を下りていく。
もう日が暮れる時間なのに、仕事に戻るのだ。
 
忙しいのに時間を見つけてわたしと会ってくれている。
 

ブランドショップで購入したハンカチは、小さな箱に入れられ丁寧にリボンがかけられていた。
 

戸田さんが消えていった階段を見下ろして、わたしはため息をつく。


彼のことを好きになれれば、きっと、すべてがうまくいくのに。










 

 
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