婚カチュ。
 
2  ◇ ◇ ◇

 
アドバイザーにデートの報告をするためだと自分に言い聞かせて、わたしは相談所の最寄り駅で電車を降りた。
もうすっかり日が落ちてビルも電柱も群青色に染まっている。
 

フェリースが入っているテナントビルに近づいたところでわたしは足を止めた。
ビルの入り口で男女が口論している。

街灯に照らし出された男性の顔にはっとした瞬間、女性が右手を振り上げ――


「なによ、マザコンのくせに!」
 

力いっぱい平手打ちを食らわせて、彼女がこちらに歩いてくる。
茶色の髪を巻いて顔にしっかりと化粧を施した派手なタイプの女の子だった。

わたしとすれ違う瞬間、「なに見てんのよ」と睨みをきかせ、押しのけるように肩をぶつけていった。

その態度にも驚いたけれど、その前に目撃した光景が衝撃だった。
 
男性がこちらに気付く。
きれいな顔を歪ませて、恥ずかしそうに頭を掻いた。


「変なトコ見られちゃいましたね」

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