婚カチュ。
「ただ……選ぶの君自身だ」
そう言うと、戸田さんは居住まいを正した。
「こんな殺風景な場所で申し訳ないけど、まあ、結婚も一種の契約だからある意味では乙かもしれない」
真剣な顔で見つめられ、鼓動が響いた。
部屋全体を覆う空気が、ぴりりと張り詰める。
戸田さんの視線に射すくめられる。
「二ノ宮紫衣さん。私と、結婚してください」
よく通る声が、余韻を残して消え去る。
結婚をしたくてずっと思い描いていた甘いプロポーズの言葉は、想像以上に大きな衝撃をもって、わたしの心臓を打ち鳴らした。