婚カチュ。
「今ある環境の中で満足するようにしてるのよ。そうすれば常に幸せな気持ちでいられるでしょう」
母の底抜けのポジティブ精神がなんだか眩しい。
「でも、要は顔で選んだってことだよね」
わたしが指摘すると、母親は「そんな身も蓋もない」と不満そうに口を尖らせた。
「なるほど、わたしは母さんの子だわ」
面食いな母の血を受け継いでいるのだから、わたしが美形に惹かれるのも当然の帰結なのだ。
「ごちそうさま」と箸を置いて、わたしは立ち上がった。
ソファに置いてあったカバンを拾い上げる。
「もう出かけるの?」
「うん、行ってきます」
パンプスを履いていると、レオが尻尾を振って見送りにやってきた。