婚カチュ。
希和子だったらなんていうだろうか。
友人の顔を思い出しながら、考えるまでもないと思った。
条件を重視するのなら、弁護士先生からのプロポーズを受けるのがいちばんいい。
そうすれば、安定した人並み以上の生活が待っている。
感情にさえ蓋をしてしまえばいいのだ。強く想うこころはやがて風化して、きっと自然に戸田さんのほうを向くようになる。
そんなことばかり考えているから、今日はまったく仕事に身が入らなかった。
つまらないミスをして、課長にちくちく言わせる隙を与えてしまった。
デスクで頬杖をつき、ため息をつく。
課長がこちらを見ているけれど、知ったことか。
オフィスフロアを見渡せば半数は女性だった。その大半がわたしより年少だ。
職場にはどんどん若い女の子が入ってきて、わたしはどんどんお局の階段をのぼっていく。
寿退社という言葉が脳裏をよぎった。
それも、いいかもしれない。