婚カチュ。



「……好きじゃない」
 




松坂から手を離し、わたしは逃げるようにホテルの玄関をくぐった。


「先輩!」
 

あわてたように後輩が追いかけてくる。


振り返ることができなかった。
広瀬さんがどんな顔をしているかわからず、それを確認するのが恐かった。


頭の中には、雨に打たれて濡れていたビニールの傘ばかり思い浮かんだ。











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