婚カチュ。
3 ◇ ◇ ◇
真正面から想いを告げても成就しないとわかっていた松坂は、外堀を埋めていこうとすこしずつ行動を起こしていた。
ほかの誰もが気付いていた彼の気持ちに、わたしだけが気付かない。
それでもストレートに告白することはなく、わたしの記憶にちいさな引っかき傷をつけるように、意味深な言動を繰り返し、彼のことを考えさせるように仕向けたのだという。
暗闇のオフィスでさりげなく感情をさらし、その後、一緒に会社を出て、途中で別れたように見せかけてわたしのあとをつけ、結婚相談所がフェリースであることを突き止めた。
好きなひとに好きになってもらいたくて臆病になる。
気持ちが強いほど如実になるその葛藤を振り払い、現実に行動を起こした松坂を、なんの行動もしなかったわたしが、責めることなんてできない。