聖なる夜の願いごと
堅物宰相と不真面目な幼馴染
エレナと別れたウィルは王宮内にある自室に向かう。
両手に抱えた書類は執務室にある大量の書類の一部を自室に持っていくためだった。
日々、中央に上がってくる国民の声を吸い上げ、精査するのは相当な手腕が必要だ。
ウィルは執務室に積み上げられた書類を早々に見切りをつけ、一部は夜自室に帰ってから見ようとしていた。
しかしあくまでウイルは宰相の立場であり、最終決裁者は国王であるシルバだ。
最終的な決定はシルバにあり、国王の仕事の一つであるが、肝心なシルバは書類をため込む癖があった。
おそらくシルバほど王宮滞在時間が短い国王はいない。
エレナが来てからはましになったが、以前はしょっちゅう城下町に出かけては家臣たちを騒がせていた。
そのたびに書類をため込むのだが、戻ってくると尋常でない速さで書類をさばくのだ。
都度都度してくれればいいものの、周りの迷惑も考えてほしいものだと何度溜息を吐いたことか。
その当時はシルバに物申すものなどおらず、皆シルバを恐れていた。
ウィルはシルバの本質を知っていたが、国を再建するためには多少の演出も必要だと考えていたため何も言わなかった。
それに、なんだかんだ仕事はきっちりこなすのだ。
家臣から不満が出なかったのはそのためだろう。
他人には厳しく、自分には更に厳しい。それがシルバ・アルスターだ。
しかし、この男が今や何もなければ外に出ず、王宮にとどまるのはエレナがいるからだろう。