聖なる夜の願いごと
「馬鹿、今日と明日はちゃんと休みを取ってきたさ。なんてったって明日はクリスマスだからな」
「クリスマス?あぁ、そういえばそうでしたね」
しらけた表情でそっけなくそう返したウィルにデュークは信じられないものを見ているかのように目を見開く。
「お前まさか明日も執務室にこもる気か?」
「そのつもりですが」
「まじかよ…お前もシルバもまじめすぎなんだよ。明日くらいは恋人や家族のために休め」
「あいにく、家族は郊外、恋人もいませんから」
ウィルは一瞬顔を顰めたものの、何もなかったかのようにそう答えた。
しかし、デュークの減らず口はここで終わることはなかった。
「お前もいい年なんだから恋人の一人くらいつくった方がいいぞ」
「貴方もいい年なんですから恋人一人に落ち着いた方がいいですよ」
すかさず帰ってきた嫌みたっぷりの返しに、デュークはあからさまに溜息を吐いた。
「相変わらずの減らず口だな。シルバといい勝負だ」
「どうとでも言ってください。貴方に憎まれ口を叩かれても微塵も気にはしませんから」
「可愛くねー」
「これでも男ですからね。可愛く思われたら困ります」
表面上は柔らかい笑みに見えるが、中身が真っ黒のウィルはわざとらしくニッコリと笑って答えた。
舌戦でデュークがウィルに勝ったためしはなく、このまま続けていると確実に爆発するだろうことを知っていたデュークはやっと口を噤んだ。