聖なる夜の願いごと
「そういうことだ。ま、シルバはどうせ断るだろうし、持っていくだけ持っていく」
「そうですね」
ウィルもデュークもシルバが断ることをわかっているため、それほどマリアンヌの招待状を渡すことを躊躇わなかった。
じゃぁ、とばかりに執務室に向かおうとするデューク。
ウィルは両手に抱えた書類の上の招待状のことを思い出す。
「そうだ。これもお願いして良いですか?」
「なんだそれ」
デュークは訝しげな表情をしながら書類の上に置かれた招待状を手に取る。
「エレナさんから預かったものです。これもパーティーの招待状のようですよ」
「なんでエレナがこんなものをシルバに?侍女に任せればいいものを」
確かに、手紙は毎日侍女が仕分けをして、各所に届けている。
王宮に届く数多くの手紙の中から何故一通だけエレナが持っていたのだろうか。
ウィルは暫く考えた挙句、一つの可能性を導き出した。
「シルバに早く渡したかったのでは?それも明日のクリスマスパーティーの案内状の様ですし」
「クリスマスパーティーの招待状ならあと二、三通あってもおかしくないだろ。もしかしてエレナはパーティーに行きたいんじゃないか?」
「そうかもしれませんね。何にせよ早く渡してあげたいので頼みますよ」
「あぁそうだな。分かった」
ウィルにとってはこの手紙がクリスマスパーティーの招待状か否かなどどうでもよかった。
大事なのはエレナからシルバに渡して欲しいと頼まれたということだ。