聖なる夜の願いごと
んーんーとくぐもった声を上げるニーナを半ば強引に連れて執務室を離れた。
執務室から数十メートル離れた廊下で手を放すと、むせながら大きく息を吸い込んだニーナ。
「ひ、酷いです、エレナ様っ」
「ご、ごめんねニーナ」
口に当てた手を離した瞬間、ぜいぜいと呼吸をし、涙目で見上げてくるニーナにさすがにやりすぎたと謝る。
「けどあのままだったら貴方叫びそうだったから」
「エレナ様は私が叫ぼうとした理由がお分かりだったご様子ですが?」
エレナはニーナの言葉にドキッとして、言葉に詰まる。
勘の良いニーナはエレナの反応で全てを察したように溜息をついた。
「やっぱりまだシルバ様にお話してなかったんですね」
「だって…」
「だってじゃありません!あれから一週間経ったんですよ!」
やや怒り気味の声に呆れも加わり、エレナは肩身が狭かった。
「一週間頑張ったのよ。何回も話そうと思って試みたんだけど、シルバ忙しそうだったから」
「そうはいっても、もう明日じゃないですか!クリスマス!」
そうなのだ。明日は年に一度のクリスマス。
ニーナからクリスマスの夜は恋人や家族、友人たちと過ごす日と聞かされたエレナは密かにシルバとクリスマスを過ごす方法を考えていた。
それこそ一週間前からずっと。
しかし、フォレスト伯爵の裏切りによる内乱や、隣国ギルティス王国のエレナ誘拐事件からまだ日は浅く、シルバは毎日一日の大半を執務室で過ごしている。