聖なる夜の願いごと
普段なら何か言い返してきそうなものだが、思い当たる節があったのか、シルバは何も言わず考え事をしていた。
「なんにせよ普段から城に籠ってばかりじゃかわいそうだ。エレナのために考えてやるんだな」
「分かってる」
独り言のように呟かれたシルバの応答に、デュークはフッと笑った。
いつもは頑固なシルバもエレナのこととなると簡単に考えを変えるのだから面白い。
これまで付き合う女は多々あれど、真に愛する女を傍に置くのは初めてで、きっと扱いに慣れていないのだろう。
だからお互いに距離感を図りかねている。
そんな初々しい二人を見ているのも微笑ましく、ハラハラするときもある。
だが、二人のことを他人がとやかく言うことはない。
二人の付き合い方は二人で決めていかなければならないというのがデュークの信条だ。
こんな程度で駄目になるようなら、この先もきっと続かない。
けれど、シルバとエレナなら大丈夫だろうと、デュークは心の中でそう思った。
思ったが否や、デュークは自分の役目はもう終わりだと判断し、意気揚々と一枚の紙を取り出す。
「あとこれに印を頼む」
シルバは机の上に置かれた紙を見て、眉を寄せる。
「お前までクリスマス気分か?」
「俺はお前やウィルみたいに枯れきってないんでな」
デュークは呆れ顔のシルバから紙を取り上げ、印が付いていることを確認して満足したように笑った。
「じゃぁ俺はこれで。今日と明日は呼び出しはごめんだからな」
「好きにしろ」
ひらひらと目の前で踊る紙にシルバはうんざりした様子でそう言った。