聖なる夜の願いごと
机の上の書類を片づけると、椅子から立ち上がり、執務室を出た。
さすがに今日は先に寝ているかもしれない。
そう思って後宮の扉をそっと押した。
意外にも灯りはついており、部屋の中は明るかった。
シルバはエレナの姿を追ってベッドに視線をやるが…いない。
まさかと思ってソファーに視線を移せば、エレナは絨毯の上にぺたりと座り込み、ソファーに頭を預けるようにして眠っていた。
(またか……)
シルバは帰りが遅くなったことを少し後悔した。
エレナは毎夜シルバの帰りを待ってベッドで眠りにつく。
シルバが帰るまでは本を読んで待っていたり、遅くなる日はソファーで横になっていることが多い。
シルバとしてはそれが少し嬉しくもあり、心配でもあった。
いつもなら毛布にくるまってソファーに寝ていることが多いのに、今日はどうしたのだろうか。
いくら暖炉を焚いていても、夜着の上に羽織っているのは薄いブランケットのみでは風邪を引いてしまう。
特に今日のような寒い日はこんなところで寝ていては体調を崩さないか心配だった。
シルバはエレナを起こさないようにそっと触れたつもりだったが、エレナの意識はフッと覚醒する。
うっすらと目を開け、何度か瞬きさせながら視線を彷徨わせ、見下ろすシルバを視界に入れるとふにゃりと蕩ける様な笑みを浮かべる。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
少し掠れた声と柔らかな笑みに、シルバが赤面したことは言うまでもない。
シルバはざわつく心を誤魔化すように口を開く。