聖なる夜の願いごと
すごい!と興奮気味に呟くところを見ると、まどろんでいた意識も一気に覚醒したらしい。
おろしてやるとエレナは小走りでベランダに続く扉を開けて出て行った。
扉を開けた拍子に入ってきた冷たい風に焦ったシルバはすぐさまエレナの後を追う。
「幻想的な風景。なんだか落ち着く」
ブランケットをかけてやると、エレナは包まるようにブランケットを引き寄せた。
「寒くないのか?」
「ここに来るまでは地下室暮らしだったし。ちょっとだけなら大丈夫」
エレナはブランケットを見つめながら小さく笑った。
過去の境遇を明るく話すエレナにシルバは少し顔をしかめる。
十年もの長い時間を暗くて狭い地下室で暮らしていたエレナ。
エレナを連れ出す時に一度だけ赴いたが、あの地下室は石畳でできており、冬はさぞ寒いことだろう。
そんな環境の中暮らしてきたエレナにとってはこれくらいの寒さなど平気なのかもしれない。
しかし、気が気ではないシルバは雪に夢中のエレナの手を取る。
「雪は中からでも見えるだろ。寒いから中に入ろう」
エレナはシルバの言うことを素直に聞き入れ、手を取られたまま部屋の中に戻った。
冷たくなった手足を温めるため、二人は暖炉の前のソファーに座る。
「ブラントン夫人のサロンはどうだった」
「楽しかったわ。今日はね、みんなでお菓子を作ったの」
座るなりシルバが話題を振ると、エレナは興奮気味にシルバに語りかける。
ブラントン家に行った日はいつもこんな感じだ。