聖なる夜の願いごと


シルバが仕事の虫だということは今に分かったことではないが、今回の事の原因は全てエレナにある。

十二月二十五日だけは仕事を忘れて二人で過ごしたいなどとエレナの口から言えるはずもなかった。



そんなエレナに好機が訪れたのが一週間前のこと。

シルバあてに届いたのは、公爵家から国王と王妃へのクリスマスパーティーの招待状だった。

手紙を持ってきたニーナに、これならば公務という名目でシルバとパーティーに参加でき、その後は二人きりになれるじゃないですか!と言われ、一時は期待と希望に満ち溢れていたのだが…。

後宮に帰ってきて、疲れた様子のシルバを見ると、招待状を手にした時の意気込みは薄れ、どうしても言い出せなかった。




「まだ明日がある、なんて思ったらそれこそタイミングを逃してしまいますよ」

一週間自分にしてきた言い訳を他の人から指摘されると少し焦る。

ずっと見守っていたニーナもさぞかしヤキモキしていることだろう。




「けど…今シルバが忙しいのは私のせいでしょう?だから言いにくくて…」

「内乱も他国との紛争もきっかけはエレナ様だったかもしれませんが、いずれ起こりうることだったと私は思います。後処理程面倒なことはありませんが、ここでしっかりと根絶しておかなければ、また同じような輩が増えることは必至」

ニーナは真面目な顔をしてそう話した後、「けど!」と大きな声で続ける。

この後矢継早に来るであろう言葉を覚悟してエレナは姿勢を正した。



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