聖なる夜の願いごと
後悔する国王とおせっかいな侍女
一方その頃、王城の執務室にこもっていたシルバを訪問するものがいた。
コンコンと控えめに叩かれた音に、シルバは手元の書類から顔を上げる。
「シルバ様」
遠慮がちに扉を開けて入ってきたのはニーナだった。
「まだいたのか。今日は休みを取っていただろ」
「そうなんですが、少しお話したいことがありまして」
「どうしたんだ?」
シルバは様子のおかしいニーナを訝りながら紙にはしらせていたペンを止める。
するとニーナは衣服の端を強く握り、言いにくそうにしながらも口を開いた。
「シルバ様…なぜエレナ様をおひとりでパーティーに行かせたんですか?」
「なぜとは?エレナがパーティーに行きたいと言ったからに決まってるじゃないか」
神妙な面持ちのニーナにかまえていたシルバは肩の力を抜いた。
「今まで俺が必要以上に過保護になっていたと自覚していたところだったからな。たまにはエレナの望みも聞いてやらないといけないと…」
「違います!」
突然大きな声を上げるニーナ。
静かな執務室に響き渡ったニーナの高い声に驚いたシルバは目を丸くしてニーナを見据える。
ニーナは呆気にとられたシルバを見て、我に返った。
「すみません…違うんです。私が言いたかったのは何故おひとりで行かせたのかということです」
「今回はブラントン夫人もいるらしいじゃないか。ブラントン夫人がいればエレナも安心だろう」
話しながら二人はどうも根本的なところで食い違っている気がした。