聖なる夜の願いごと
国王の寵姫と意地悪な側室候補
クリスマスパーティーが始まって一時間が経過した頃。
エレナは大ホールで一人ぽつんとソファーに座っていた。
ブラントン夫人は各所に挨拶を済ませた後、風邪を引いた夫の下へ帰って行った。
エレナ自身も早めに帰ろうと思っていたが、思いのほかオベール公爵家のクリスマスパーティーを楽しめていた。
料理長が腕を振るった料理を楽しむのはもちろんのこと、子供たちの楽しそうな声や招待客による優雅なダンスを見ているとあっという間に時間が経ってしまったのだ。
残すところ、あと三十分余りとなったクリスマスパーティー。
エレナはこのまま最後まで残っても良いかもしれないと思い始めていた。
というのも、このクリスマスパーティーにはあともう一つ目玉イベントが残されており、エレナはそのイベントのためにパーティーに来たといっても過言ではない。
しかし、そう思っていたのはエレナだけではなかった。
「ねぇねぇ、どの木にする?」
「どの木でも同じだろ」
楽しそうな女の子の声と、呆れたような男の子の声がエレナの耳に届く。
どちらもまだあどけなさが残る顔だちをしており、パーティーに招待された令嬢と令息なのだろう
女の子が小走りで男の子の後を追う姿が何とも可愛らしい。
「同じじゃないよ!背の高い木の方が叶いやすいっていうし」
「それはただのジンクス。だいたいリボンひとつで願いごとが叶うなら苦労はしないだろ」