聖なる夜の願いごと
何故爵位も何もない娘を妃に迎えたのか、何故爵位も容姿も整った自分たちでは駄目なのか。
何故エレナただ一人が国王の寵姫となるのか…―――
シルバが側室の一人でも迎えればエレナ一人に非難が降り注ぐこともなかっただろう。
だが、シルバが選んだのはエレナただ一人。
結婚から暫く立った今、そろそろ側室の一人でも迎えた方がいいのではないかという周りの声を聞き入れずここまできてしまったが故に令嬢たちの不満もピークといったところか。
今日のようにエレナが一人でパーティーに来たということ自体が恰好の的だった。
「ここでは目立ちますのでお庭に出ませんか?」
周りを気にしたエレナがにこやかに提案した。
複数の女性が一人の女性を囲むという、はたから見てもあまり好ましくない状況を理解したのだろう。
令嬢たちは顔を見合わせて無言で庭の方へ向かった。
ひとりひとりはプライドが高く相容れない存在のようだが、こういう時だけ団結力を発揮するとは呆れを通り越して感心する。
エレナはぞろぞろと庭に向かう令嬢たちの後を追って行った。
「私たちを外に連れ出して何の御用ですの?王妃様」
ホールから少し離れた庭に来るや否や、開口一番“王妃”という言葉にこれでもかというほどの嫌みを含んでそう聞く令嬢。
エレナは凄味の増した令嬢たちの顔つきに肩身の狭い思いをしながらおずおずと口を開く。