聖なる夜の願いごと
「えっと…用事があるわけではないのだけど、貴方たちが私に何か言いたいことがあるんじゃないかと思って」
様子を伺いつつそういったエレナに令嬢たちは互いに訝しげな表情を浮かべて視線を交わす。
エレナは気丈にふるまってそういったが、言葉は緊張で僅かに震えていた。
今まで陰で妬みや僻みを口にされたことは多くあれど、エレナはシルバの妻になった時から覚悟し、甘んじて受けていた。
しかし、あるパーティーで陰口を叩かれていたエレナを見かねたブラントン夫人がこういった。
“陰口を受け入れることに慣れてしまっては何にも解決しませんよ”
エレナはこの言葉を聞いて、涙を流した。
知らず知らずのうちに溜め込んでいた負の感情が堰を切ったように。
所詮我慢などその場限りのものであって、吐き出さない限り溜め込んでいく。
それが自分に向けられた妬みや僻みなら尚更。
エレナはブラントン夫人に言葉をかけられるまで誰にも相談せず、ただ自分が我慢をすれば済むことだと思っていた。
けれど、ブラントン夫人の言うとおり、自分が嫌だと思うなら解決するために動くのもまた自分だと気付かされた。
だから、エレナは勇気を振り絞って令嬢たちを庭に誘い出したのだ。