聖なる夜の願いごと


しかし、エレナの心はいたって穏やかだった。


「そうなんですか。私も見習わせていただきます」

「ずいぶん余裕ですのね。陛下がご側室をお迎えにならないとでもお思いなのですか?」

「いいえ、そのようなことはございません。この国の将来を考えれば自然とそういったお話も出ると思います。陛下ももしかしたら心変わりをされるかもしれません」

穏やかというよりも、以前よりも客観的に自分自身を見つめることができているからこんなことが言えるのかもしれない。


“こうあるのが妃”

“こう考えるのが普通なのだ”


エレナはそんなことを考えながら、自分の中で理想の妃像をイメージすることで冷静さを保つことを覚えた。

そうでなければ、シルバを独占したいという気持ちが勝ってしまうから。

なによりシルバを好きな令嬢たちと向き合うことなどできなかった。




「もし陛下が側室をお迎えになりたいというのなら私は何も口出しなどできません」

「そうですわね。皆、まだ陛下のお傍に仕えることを諦めていませんから」

「えぇ、わかっています。皆さん陛下のお心を一瞬でも捉えようと美しく着飾って、とても努力されているのだと感じます」

同じくらいシルバのことが好きだとして、報われない想いを抱え続けるのはとても辛いことだ。

けれど、エレナはそれに同情することはできない。

だからエレナが令嬢たちに言えることはただ一つ。


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