聖なる夜の願いごと
迷える王妃と孤独な幼子


令嬢たちがホールに戻った後、エレナは静かな庭で一人佇んでいた。

あんなに一緒に過ごしたかったシルバが来たというのに嬉しいどころかむしろ気分が沈む。

それはきっと令嬢たちから聞いた女性“マリアンヌ嬢”の存在が気にかかっているからだ。

一緒に来たとは言っていたが、それはきっと入口で偶然会ってホールに入ってきただけのことだと思う。

エレナはそう思えるくらいにはシルバのことを信じていた。

しかし、二人でパーティーに来たとあれば今ホールでは大変なことになっているだろうし、顔を合わせにくいことには変わりない。




(どうしよう…)


雪は止んでいるものの、外はひんやりと寒い。

上着を預けてきたため屋敷内に戻りたいというのが本音だ。

エレナは暫く悩んだ後、少し時間を潰してからホールに戻ることを決断して屋敷とは反対方向へ歩き出した。





オベール公爵家の敷地の広さは国内随一を誇る敷地面積を有している。

オベール公爵はその広大な敷地を利用して意匠を凝らした庭や噴水を創り、屋敷を囲うように様々な植物を植えていた。

中でも有名なのが今回のパーティーの目玉となっているモミの木だ。

敷地内でありながら森といってもいいくらいに植えてあり、クリスマスになるとオベール公爵家にモミの木を求めてやってくる人々が多くいるという。

そのためか、ところどころモミの木が掘り起こされた跡があった。



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