聖なる夜の願いごと
「分かった。じゃぁ私も付き合うわ。その代り、リボンを結んだら一緒にホールに戻ってくれる?」
「うん。分かった」
「けどここにはたくさんのモミの木があるみたいだし、一番高いモミの木を見つけるってどうすればいいのかしら」
手っ取り早いのは屋敷へ戻り、高い建物から見下ろして目星をつけるのが一番なのだが、エドは戻りたくないだろう。
かといってこの寒い中歩き回って探すのも難しい。
エレナが迷いあぐねていると、エドは「それなら大丈夫」と得意げにいう。
「僕どこにあるのか知ってるから」
「え?」
「来て。こっち」
エドはエレナに聞き返す間も与えず、エレナの手を取って走り出す。
何故エドが一番高いモミの木の在り処を知っているのか。
そう聞きたくとも、早々に息が上がったエレナはエドについていくのに必死で一言も発することはできなかった。
どれくらい走っただろうか、エレナが限界に近づいた頃、エドの足が止まる。
エレナは止まった瞬間、思わず膝を折り、ゼイゼイと呼吸を繰り返した。
「お姉ちゃん、見て」
エドの子供らしいはしゃいだ声につられ、エレナが視線を持ち上げると…―――
そこには周りの木々たちとは明らかに背丈の異なるモミの木がそびえ立っていた。
夜空に向かって真っすぐと伸びる姿は壮麗で、圧巻の光景だった。