聖なる夜の願いごと
涙目で首を横に振るエレナに、ニーナもこれ以上の強行突破は出来ないと諦めて頷く。
それに胸をなでおろしたエレナは口を塞いでいた手を放してニーナの手を取る。
「行きましょう、ニーナ」
手を引いてその場を去ろうとしたエレナだったが、ニーナの足が止まる。
「陛下、つかぬことをお聞きしますが、明日はどのようなご予定でしょうか」
「明日も城にとどまって政務だが」
一瞬浮上した気持ちが下降する。
他人の力を借りて目的を成し遂げようとした罰が当たったのだ。
明らかに落ち込んだ様子のエレナを横に、ニーナも肩を落とす。
「そうでしたか…明日のご公務は休むことはできませんよね?」
「どうしたんだいきなり」
様子のおかしい二人にシルバは訝るように眉を寄せた。
ニーナはエレナに視線を向けると、エレナは眉尻を下げて笑う。
“しょうがないよ”
ニーナにはエレナがそういっているような気がして胸が締め付けられた。
「いえ、何でもございません。ありがとうございます」
これ以上自分の口から言うべきでないと判断したニーナはそれ以上何も言わず頭を下げた。
一方、渦中の人物であるシルバはエレナとニーナの言動の意味を全く持って理解していなかった。
「おい!」
後ろから呼び止める声に振り返らず、ニーナはエレナの手を引いてその場から離れた。