聖なる夜の願いごと
「お姉ちゃん大丈夫?」
心配そうなエドの声に、エレナは振り返るが、エレナは下を見たことを後悔する。
下から見れば平気だった光景も、登ってみれば意外と高く、思わず身をすくませた。
しかし、自分から申し出た手前、引くに引けない。
「だ、大丈夫」
「一番低い枝でいいからね」
エレナは引きつる笑顔で応え、また梯子を上りはじめる。
時間をかけてゆっくり上り、一番下の枝に手が伸びるくらいの高さに到達すると、握りしめていたエドのリボンをポケットから取り出す。
「エド、この枝でいいかしら」
「うん。そこでいいよ」
エレナはエドの承諾を得ると、木の枝に手を伸ばし、器用にリボンを結ぶ。
「結んだわよ」
エレナの呼びかけにエドは両手を組んで胸にあて目を閉じる。
一生懸命願いごとをするエドを見てエレナも“エドの願いが叶いますように”と願った。
暫くして目を開けたエドにエレナは微笑みかける。
「ちゃんとお願ごとはできた?」
「うん!お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。ご両親が早く帰ってくると良いわね」
「うん!」
満面の笑みで応えるエドの表情に、エレナはつられて笑った。
「お姉ちゃんは?」
「え?」
「お姉ちゃんもリボンもってるんでしょ?」
「あ……」
エドの問いかけにエレナは梯子を降りながら自分のリボンのことを思い出す。
もうホールではモミの木にリボンを結んでいる頃だ。
これから帰ったとしても間に合わないだろう。