聖なる夜の願いごと
「国のため世継ぎを残すという使命のためだけの割り切った関係でもいいという覚悟があるなら例外だが。少なくとも俺は毛頭ない」
「陛下は割り切った関係などできないと?」
「あぁそうだ。エレナは過去と今と未来において、俺が愛するたった一人の存在だと言える」
シルバの言葉に周りが色めき立つ。
顔面蒼白になるもの、顔を赤らめて照れるもの、様々な反応があった。
「俺はエレナを子供を産ませるだけの道具だと思ったことは一度もないし、周りが世継ぎ問題のことでとやかく言うようなら俺はエレナを守る」
シルバは真面目な顔つきでそう言った後、不敵な笑みを浮かべる。
「まぁ十年後を楽しみにしていろ。お前たちに文句を言わせない程度にはこの国は安泰だと思わせてやる」
かつて冷酷で冷徹な国王と呼ばれた男がここまで変わるとは誰が思っただろうか。
しかもたった一人の女のために。
「何故エレナ様だったのですか」
「何故…か」
マリアンヌの問いを自問自答するように呟くシルバ。
シルバは自分でも何故エレナだったのかと不思議に思うこともあった。
しかし、マリアンヌへの答えは決まっていた。
「気づいた時には惹かれていた」
こんな抽象的な答えではマリアンヌを納得させられるとは思ってはいなかったが、シルバにとっては素直な答えだ。
案の定マリアンヌと周りで見守っていた令嬢たちは納得していなさそうだった。
どう説明したものか思案したシルバはマリアンヌではなく、周りにいた令嬢たちに視線を遣る。