聖なる夜の願いごと


「お前たちエレナと話したことはあるか?」

シルバが話しかけたのは先ほどエレナが庭に連れ出した令嬢たちだった。

令嬢たちは突然シルバに話しかけられたからか、上ずった声で「はい」と答えた。




「なら分かるはずだ。俺が何故エレナに惹かれたか。あいつ、ほっとけないだろ?」

そういって微笑んだシルバに真っ赤になりながら頷く令嬢たち。

けどその微笑みは自分たちにではなくエレナに向けられた笑みだと分かっていた。

それでも不思議とエレナに対する嫉妬はなかった。

エレナと話した時間は短かったが、令嬢たちもシルバがエレナに惹かれた理由が分かったような気がしたのだ。




「人を愛する気持ちは理屈じゃない。厄介だと思いながらも惹かれるならもうそれはどうしようもないくらいに愛しているということだろ」

今皆が目の前にしているのはもうかつてのシルバではないと確信した瞬間だった。

マリアンヌはその言葉に何も言い返すことは出来ず、悔しそうな表情のままその場を去った。




(あれでは納得はしていないだろうな)



シルバは溜息を吐き、マリアンヌの背を見ながらそう思う。

しかし、これ以上シルバが説明したところでマリアンヌが納得するとも思えなかった。

まぁ後はなるようになるだろう、と思ってシルバがホールの中心へと歩いていくと、見知った人影があった。



「オベール公爵」

シルバはその人物の名を呼ぶと、老夫婦がシルバの方を振り向く。



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