聖なる夜の願いごと
「大丈夫だよ。雪の妖精さんも一緒だったし」
「雪の妖精?」
エドワードが発した非現実的な呼称にオベール夫妻とシルバは訝しげな表情をした。
「うん!全身真っ白なの。だから雪の妖精さん」
(まさか…)
シルバは嫌な予感がした。
「それはもしかして……」
オベール夫妻も同じ考えが頭をよぎり、シルバの方を見る。
シルバは何も言わずにオベール夫妻に向かって頷き、エドワードと視線を合わせる。
「エドワードとか言ったな。その…雪の妖精は今どこにいる」
「まだ森にいるよ。たぶんお願いごとをしてると思う」
「行ってくる」
シルバはエドワードの答えを聞くや否や立ち上がり、庭に続く出入り口へ歩いていく。
外は吹雪とまではいかないがポツリポツリと雪は降っており、気温が低い。
エレナにつけた従者が外で待機していたところを見ると上着は従者に預けているだろうと推測できる。
するとエレナは今、ドレスのみで外にいるわけで…。
「陛下!」
不安に駆られ、走り出すシルバの背に公爵夫人が呼び止める。
「エレナ様がエドワードと別れた場所から動いていないとしたら、おそらく一番高いモミの木にいらっしゃると思います」
「分かった」
シルバは短くそう答えて、寒空の下へ駆け出した。