聖なる夜の願いごと
国王と王妃の聖なる夜の願いごと


ホールでひと騒動が起きていた頃、エレナはまだモミの木の下にいた。

一度立ち上がってみたものの、やはり足首が少し痛く、痛みが引いてから帰ろうと思ったためだ。

しかし、痛みが引くのを待っている間にも雪は降り積もり、体は冷える。



「帰らなきゃ…」

エレナはぽつりと独り言を呟き、立ち上がる。

そして、足のつま先を地面にトントンと打ち付け、具合を確かめる。

座っている間、ずっと足首を雪にあてていたためか痛みは若干引いていた。



(これなら屋敷までは戻れそう)


エレナは倒れていた梯子を元あった場所へと立てかけ、モミの木を見上げる。

梯子は壊れ、もうモミの木にリボンを結ぶことも出来なくなった。

元々大それた願いごとをするつもりでもなかったため諦めもつく。

それよりも今は早くシルバのもとへ帰りたかった。




(シルバ…何してるだろ…マリアンヌさんと一緒なのかな)


エレナは空を見上げ、ホールにいるシルバに思いをはせる。

しかし、森の中で独りぼっちだからか、一層寂しい気持ちにかられた。

もし城にいればシルバはマリアンヌとパーティーに来ることもなかっただろうか。

否、そんな確証はない。




ただ…―――――

(シルバがここに来たのは私を迎えに来てくれたと思いたいだけ)


こんなことなら城に残れば良かったと思うが、今頃後悔しても遅い。



「会いたいな」

降りゆく雪に手を伸ばし、寒空にエレナの声が小さく響いた時。



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