聖なる夜の願いごと
何もないところで転げたことといい、湖で溺れた時といい、シルバには呆れられてばかりだ。
エレナが密かに落ち込んでいると、突然の浮遊感に襲われる。
シルバはエレナの体ごと抱え上げ、歩き出したのだ。
「肩を貸してくれたら良かったのに」
「今回は特別だ」
ぶっきらぼうにそういったシルバにエレナはクスッと小さく笑みがこぼれた。
今回は特別だなどいうが、きっとシルバならいつだって抱き上げて運んでくれるだろう。
「ありがとう、シルバ」
エレナはシルバの首に腕を回し、身を任せた。
シルバは照れを隠すようにエレナに問いかける。
「それで?モミの木に何を願うんだ?」
「秘密」
エレナは少し考えた後、幸せそうに笑って答えた。
だって本当はもう叶ってるもの…――
エレナは幸せそうにリボンを握りしめながらシルバに寄り掛かった。
すれ違い、勘違い、行き違った末に訪れた小さな幸せ。
それは聖夜の奇跡か、二人の愛故か。
いつしか雪は止み、ささやかな幸せをかみしめる二人を照らすのは澄んだ夜空に煌めく星々だけだった。
END