聖なる夜の願いごと


何もないところで転げたことといい、湖で溺れた時といい、シルバには呆れられてばかりだ。

エレナが密かに落ち込んでいると、突然の浮遊感に襲われる。

シルバはエレナの体ごと抱え上げ、歩き出したのだ。




「肩を貸してくれたら良かったのに」

「今回は特別だ」


ぶっきらぼうにそういったシルバにエレナはクスッと小さく笑みがこぼれた。

今回は特別だなどいうが、きっとシルバならいつだって抱き上げて運んでくれるだろう。



「ありがとう、シルバ」

エレナはシルバの首に腕を回し、身を任せた。

シルバは照れを隠すようにエレナに問いかける。




「それで?モミの木に何を願うんだ?」

「秘密」

エレナは少し考えた後、幸せそうに笑って答えた。



だって本当はもう叶ってるもの…――

エレナは幸せそうにリボンを握りしめながらシルバに寄り掛かった。





すれ違い、勘違い、行き違った末に訪れた小さな幸せ。

それは聖夜の奇跡か、二人の愛故か。

いつしか雪は止み、ささやかな幸せをかみしめる二人を照らすのは澄んだ夜空に煌めく星々だけだった。





END
< 65 / 65 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:68

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

白銀の女神 紅の王(番外編)

総文字数/59,454

ファンタジー115ページ

表紙を見る
鐘つき聖堂の魔女

総文字数/113,097

ファンタジー180ページ

表紙を見る
孤高の天使

総文字数/244,940

ファンタジー431ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop