【企画】魔法が醒めるとき



《じゃあ、それだけ聞きたかっただけだったから……》

「え!? もう?」


切っちゃうの?


「え、あ……いや。えっとー」


なんて自分勝手なんだろう。


言った後に、そう思ってしまった。


だって、今まで“うん”しか言わなかったくせに、光が電話を切るって言ったら急に大きな声を出して。


だけど次の言葉が見つからなくて黙ってしまう。


“まだ話していたい”

そんな言葉が言えなくて。


どうしよう……。

そう悩んでいたあたしの耳に、光の微かな笑い声が響く。



「ひ、光? どうしたの?」

《いや。良かったって思って》


良かった。って何が?

光の言葉に首を傾げた。


《携帯かけたのやっぱり迷惑だったんじゃないのかなー。って思ってさ》

「え? め、迷惑なんかじゃっ…」

《うん、知ってる》


焦るあたしと、落ち着いた光の声。

その声に、あたしは大人しくなってしまった。


だって、全部バレてる。


何か恥ずかしい。


妙に焦っちゃってるあたしも。

言いたい事が言えないあたしも。

正座なんかしちゃってるあたしも。



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