【企画】魔法が醒めるとき



「落ち着いたか?」


だけど現実は必ずやってくる。


光の声が体全体に響き、あたしはコクンと頷いた。


「送ってくから……服着ろよ」


抱きしめられた隙間から光を見上げると、少し困った笑顔を零していた。


それを見て、また泣きそうになる。


こんな駄々っ子みたいな事をして、迷惑って思われたのかなって。


「ほら、またんな顔する。帰したくなくなんだろーが」


え?


ぶっきら棒に言ったその言葉に、また顔を上げると少し頬を赤くした光がそっぽを向いていた。


グシャっと頭を乱暴に撫でると


「早く着替えねーと……怒んぞ?」


なんて。


そんな優しい顔で言われても恐くないよ?


だけど、これ以上光を困らせたくないから。

あたしは、その言葉に素直に従った。




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