【企画】魔法が醒めるとき
パタンと扉が音を立て閉まったと同時に、きつく抱きしめあった。
そこには言葉なんてなくて。
ただ“好き”その気持ちしか見えない。
自分勝手な行動だなんて初めからわかってる。
だけど止めれない。
止められないの。
「光……、あたし、あたしね?」
「何も言うな」
我慢していた涙は、洪水のように溢れ出していた。
そっと指ですくう光も、何だか泣いているように見える。
こんなに哀しいキスをした事なんてない。
こんなに激しく求め合った事なんてない。
本当はわかっていたんだよ。
ちゃんと、わかってたの。
あたしだって子供じゃない、先の事は見えていた。
だけど、それを認めるのが恐くて。
醒めてしまうのが恐くて。
そう。光をなくすのが恐かったんだ。
光に抱かれながら、頭の隅で気付いていた。
これが最後の夜になるんじゃないかって。
こんな光の表情を見るのは最後になると。