【企画】魔法が醒めるとき
「月美……」
「なぁに?」
あたしの頭を抱えるように抱き、もう片方の手で指を絡める光。
「このまま、逃げないか?」
胸が熱くなった。
光は、こんな言葉を言う人じゃない。
こっちが恥ずかしくなるような事をサラッと言っちゃう、そんな人だけど。
夢を語るような人じゃないから。
光にだって過去がある。
あたしを抱いた後、哀しい瞳で空を見上げる時があった。
あたしは、それに気付いていたんだ。
あたしじゃない誰かを想っているんだろう、と。
だけど、あたしを抱いている時だけ。
その時だけは、あたししか見ていない。
それで満足だったの。
こんな恋愛なんて、今までのあたしなら考えられない。
友達が相談してくるものなら、すぐに別れろ。そう言っていただろう。
自分が経験して初めて知った、想い。
それでもいいから、そばに居たい。
遊ばれていようとも、本気じゃなかろうとも、それでも良かったんだ。
だって……あたしが好きだったから。
光を愛してしまったから。