【企画】魔法が醒めるとき
――コンコン
ドアをノックする音に返事を返すと東吾さんの姿があった。
「突然来てすみません」
いつもの優しい笑顔に、少し哀しい表情が混じる。
こんな顔、あたしがさせてるんだ。
「東吾さん……」
「少し痩せたんじゃないですか? ちゃんと食事してますか?」
この人は何を言ってるんだろう。
こんな時にまで、あたしの心配?
「月美さんは、十分に細いんですからしっかり食べなきゃ」
違うでしょう?
もっと他に言う事があって来たんでしょう。
「あ、そうだ。今度気晴らしにドライブなんてどうです? お母様には僕から言ってみますから……」
「東吾さん!」
出窓を開け、外から心地の良い風にサラサラの髪を揺らす東吾さんを真っ直ぐに見つめた。
「はい?」
にっこり微笑む、その笑顔を見ていると胸が苦しくなった。
「どうして聞かないの?」
搾り出すような声に
「聞いたら、あなたは笑顔になりますか?」
困った顔を見せる。