【企画】魔法が醒めるとき
「月美様、もうすぐ東吾様がお迎えにいらっしゃるとのお電話がございました」
「……はい」
あれから、東吾さんは毎日のようにあたしを誘い出してくれていた。
本当なら、婚約解消をされても可笑しくないのに。
今回、東吾さんは初めてご両親に意見を言ったんだと笑っていた。
あたしとの結婚は絶対に止めたくないと。
東吾さんとあたしの結婚は、どちらの家にしても有利な結婚なわけで。
いわゆる、政略結婚と呼ばれるもの。
流石に今回の事で婚約解消になるかと思ったけど、東吾さんの一言で簡単に収まってしまった。
準備をして部屋を出ようとした瞬間、鞄の中で携帯のバイブが響いた。
そっと取り出し、ディスプレイを見て
――ドクンッ
大きく高鳴る胸。
恐る恐るボタンを押し、耳に当てた携帯から聞こえてきた
《月美?》
愛しい声。