【企画】魔法が醒めるとき
☆7☆
「月美さん、どうかしましたか?」
車を運転しながら、東吾さんが心配そうな声を出した。
「ううん、どうもしないよ」
今日、光は旅立ってしまう。
神戸へ。
あの後、東吾さんと出かける事が出来ず体調が悪いと嘘を吐き、部屋へと戻った。
そしてかけ直した光の携帯からは、また機械音が流れた。
それでも何度かかけ直していたら、携帯は解約されていたんだ。
解約する前に、最後に、あたしの元へ連絡をしてくれたんだと思うと、涙が止まらなくなってしまった。
今までにあれほど泣いたのは、昨日が初めてだろう。
こんなにも胸を痛め、こんなにも涙を流し、こんなにも人を想ったのは……光だけだった。
何を犠牲にしても。
何にも代えられない人だった。
その人が……いなくなってしまう。