RUN for YOU
「涼子のこと、私も知ってる。その理由も。……それから、瑠子ちゃんが陸上から離れたことも」


すみれさんは少し俯きぎみで、そう言った。


「でもね瑠子ちゃん。涼子はきっとこんなことは望んでなかったはずよ」

「え………」

「涼子ね、いつか瑠子が自分の記録を超えると思ってるの、って言ってたのよ。それから、その日が来るまで絶対に走り続けてほしいって」


あたしは黙って、すみれさんの話を聞いていた。


─もしかしたら、瑠子があたしの記録を超える瞬間を、あたしは見られないかもしれない。そばにいて、一緒に喜んであげられないかもしれない。途中でくじけそうになった時、あたしが支えてあげられないかもしれない。それでも、あたしは瑠子に、走り続けてほしい。あの子の走る姿と、あの笑顔で、たくさんの人に、幸せを与えて欲しい。あの子なら、きっとできる。だって、あたしの娘よ??あたしの、自慢の娘なんだから。瑠子なら、あたしがいなくても大丈夫。あの子のまわりには、たくさんの笑顔があふれているから。そして、あの子は絶対に、諦めないはずだから─


お母さんが亡くなる前に、すみれさんに宛てて書いた手紙に書いてあったらしい。

きっと、お母さんはなにか感じとっていたのかもしれない。











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