アイサツはビンタ!
やがてクラスの連中が哀れな俺に気づき、クスクスと失笑する。

宇多ティーまでもが、俺の間抜けな状況に眉を潜める始末。

宇多ティー、あんたも人の子なら助けてくれ。

あ、今、目をそらしたな!

そんなに自分のちょっといい話の方が大事か!

両サイドから頬を引っ張られた間抜け極まりない顔のまま、教壇に怨念のこもった視線を投げかけてやった。

「早く終わらないかなー。お、わ、ら、な、い、か、なー」

お嬢は言葉に合わせて、俺の頬を引っ張ったり縮めたり。

いてて、そこは強く引っ張るな。

口内炎が出来ててイテェんだってば!

いよいよ我慢できなくなり。

「!」

俺はお嬢と宗方の手を払いのけた。

この野郎、黙ってりゃ好き放題やりやがって。

俺は羽山みたいに撫でられたりペチペチされて悦ぶアヤシゲな趣味は持ち合わせてねぇんだ。

「……」

俺が手を払いのけると、意表を突かれたのか、お嬢はおとなしくなった。

どうやら大人しいチワワだと思っていたら、実は気性の荒い土佐犬だった、という感じか。


土佐犬をチワワと勘違いする人間なんぞ、この世には存在せんだろうが。

だが。

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