アイサツはビンタ!
「なぁお嬢」

何とか会話を切り出そうと振り向こうとして。

「馬鹿!こっち見るな!」

お嬢に怒鳴られて、俺は振り向くのをやめた。

「濡れたブラウス脱いじゃってるから、こっち見るなっ」

お嬢の声は、何だかいつもと違って余裕がない。

え、待てよ、ブラウス脱いでるって…。

それじゃお嬢、今上半身は下着だけ…?

「わーっ!!想像するなーッ!!」

察したのか、お嬢が上履きを脱いで俺に投げつけてくる。

「わかったわかった!想像しないから投げんな!」

慌てて俺も叫ぶ。

…そして、また沈黙。

お互いに何を言うでもなく、俺達は背を向けて座ったまま、濡れた服が乾くのを待っていた。

…校庭から、運動部の掛け声らしきものが聞こえる。

音楽室からは吹奏楽部のトランペットの音。

それだけだ。

あとは、何も聞こえない静かな教室。

その静けさが、妙にお嬢の事を意識させた。

…おいおい、何だよこの雰囲気。

お嬢と俺のキャラに、合ってなくねえか?





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