アイサツはビンタ!
で、放課後。

「……」

「……」

俺とお嬢は廊下で顔を見合わせ、お互いに溜息をつく。

本当なら二人で今後の対策を講じたいところなのだが、この時期に二人きりになったら噂が拡大しかねない。

羽山と宗方も伴って、教室で作戦会議という事になった。




「…実際のところ、何もなかったんだろ?」

羽山が言うと。

「当たり前でしょ…?」

底冷えのするような声でお嬢が言う。

震え上がる羽山。

…会議中の羽山の台詞はこれだけだった。

羽山、不用意な発言を…。

「それにしてもさ」

宗方が苦笑いする。

「噂なんてすぐ消えてなくなるよ。人の噂もシチジュウゴニチっていうし」

言い方にたどたどしさがある。

使い慣れないことわざ使って呂律が回らなかったんだろう。

「冗談言わないでよ、ゆきちゃん!二ヵ月半も我慢できないってば!」

お嬢が頭を抱えて天を仰いだ。

気持ちはわかる。

こんな状況俺だって我慢できないし、ストレスのたまったお嬢が発散の為に俺をビンタする頻度も上がりそうだ。

つまり二ヵ月半後には、俺の顔の形が変わっているかもしれないのである。

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