アイサツはビンタ!
うーん、と腕を組んで、四者四様に考え込む。

「あーあ」と。

お嬢が溜息をついた。

「なんだって卓也君とこんな噂になっちゃうのかしら…」

…ちょっと、俺は勘違いをしていた。

今考えれば、お嬢は「卓也君とはそんな不純な関係じゃなくて清い関係なのに」と言いたかったらしい。

だが、この時の俺は誤解してしまったのだ。

「俺だってお前と噂になるくらいなら、もっと可愛い子が相手の方がよかったよ」

…どうも俺は、お嬢の発言に少し拗ねていたようなのだ。

自覚はないんだが。

「な」

お嬢も俺の発言にムッとする。

「な、なによぅ、私だってねぇ、好きで卓也君なんかとセット扱いされてんじゃないわよっ!」

売り言葉に買い言葉。

お嬢はキツイ台詞で反論する。

「じゃあ誰だったらいいのかねえ?」

ふん、と顔をそらして俺は言う。

「卓也君こそ誰だったらよかったのよ?私と二人きりでドキドキしてたくせに、よく言うわ」

「ど、ドキドキなんかしてねえっ!!」

「してたわよっ!声上擦ってたもん!!」

「お前だって!!」

俺は頭に血が昇っていた。

「いつもビンタとかしてごめんねとか、やたらしおらしい事言ってたくせに!!」


< 52 / 75 >

この作品をシェア

pagetop