アイサツはビンタ!
言った。

確かに言った。

二人きりの教室で俺が言った台詞だ。

嘘じゃない。確かにあの時はそう思った。

今でもそう思ってる。

けど。

「……っ」

俺は無言。折れる気がない。

「…ばかあっ!!」

お嬢は涙が決壊してしまう事を恐れたのか、教室から走り出て行った。

「あ…あぁああ…」

一部始終を見ていた宗方と羽山がオロオロしている。

「ね、ねぇ卓也君、お嬢行っちゃったよ?いいの?追っかけた方がいいんじゃないかな?」

…俺はゆっくり立ち上がり、ズボンについた埃を払う。

「知るか!ほっとけ!!」

イライラが止まらない。

それはお嬢の態度にか、自分の失言にか。

俺は、教室の机を思いっきり蹴倒して八つ当たりした後。

「帰る!!」

鞄片手に、教室を出て行った。

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