アイサツはビンタ!
翌日から、それはもう険悪なムードだった。

俺は羽山と、お嬢は宗方と会話。

羽山と宗方が会話している時は、お互いに無言に徹している。

はっきり言って、俺もお嬢もムチャクチャ機嫌が悪かった。

なので、昨日まで噂話で盛り上がっていた連中も、何となく「これは触れない方がいいかな…」と察してくれたらしい。

空気の読めない奴だけが、お嬢の冷徹な発言で身も心も震え上がらせていた。

宗方の予想を大きく裏切り、噂は七十五日どころか、わずか数日で終息したのである。

…だが、噂は置き土産としてもっと厄介なものを残している。




「ねぇ卓也君、謝ってあげなよー?」

宗方が後ろの席から声をかけてくる。

「あぁ?」

俺は半ギレ気味に返事を返した。

「何だそりゃ小娘、俺が悪いって事か?」

「どっちが悪いって言えば、どっちも悪いけどぉ」

シャーペンをクルクルッと回しながら、小娘らしからぬ正論を口にする。

「お嬢の性格上、絶対に自分からは謝らないよ?今ツンモード全開だから」

「じゃあほっとけ。俺もツンモードだ」

「男のツンは可愛くないの」

「可愛いなんて思ってくれんでいい」

「とにかく謝ってあげてよぉ」

宗方は困惑したように言った。

「お嬢もあんな態度だけど、本当は仲直りしたいんだってば」

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