アイサツはビンタ!
ところで。

俺はペチペチと額を叩く平井の手を振り払って宗方に訊く。

「お嬢って何だ?コイツいいとこの娘か?」

「うん、そう」

宗方に尋ねたのに平井が頷く。

いいとこの娘か?と訊かれて、うん、と答える辺り、謙遜ってものを知らない。

「私んち歯科やっててねー。ちょっとお金持ちなんだよー」

ニコニコしながら平井が俺の額を指でクリクリといじる。


「へー、それでお嬢か。短絡的だな」

もう一度平井…お嬢の手を払いのけて、俺は呟いた。

「歯が痛くなったらお嬢のとこ行くといいよ。腕がいい歯医者さんなんだって」

宗方がお嬢と一緒になって、俺の額を触ろうとする。

ええい、鬱陶しいっ。

「まぁ腕がいいって言っても、たまに痛そうに声上げる患者さんもいるけどね」

そう言ってお嬢は、ニンマリと笑みを浮かべた。

ああ…ここで俺は気づくべきだったんだ。

何で痛そうだって話の時に、実にいい笑顔を浮かべるんだ、コイツは。

コイツはつまり、そう。

この時点で既に、その内面に隠されたSっぷりの片鱗を垣間見せつつあったのだ。


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