血よりも愛すべき最愛
「早く……」
帰らなきゃと、足を進める。
目薬を下宿先に置いてきたのは、目的地が十分もかからない場所だったからだ。
『彼女』の目的地は、質屋であった。
顔のこともあり職につけない『彼女』は、こうして所持品を金に代えるしかない。
死んだ両親の貯金もあまりなく、元々貧しかったため宝石の類いは持っていなかったが――10才の時から求婚されていれば、話は別だ。
女の気を引きたい男からのプレゼントならばまだ普通だが、『彼女』に贈られる物は全て、指輪。『彼女』の年齢を省みない結婚指輪を無理矢理、左薬指にはめられた。