血よりも愛すべき最愛
当然ながら大半の物は捨てるが、家の郵便受けや『彼女』の自室の枕元にあった物――母が見つけた物は取ってあったのだ。
まさか娘を残して死ぬことなど考えてはいないが、平穏を脅かす男たちからの『慰謝料』として貰いたくなる気持ちは不思議ではない。
『彼女』がそれを知ったのは、母が死んでから。指輪に込められた“想い”を考えれば、吐き気を覚え、捨てたくなるが――『彼女』は子供ではなくなったのだ。
一人で生きていかなければならない。現実と向き合い、現実を知った『彼女』は吐きながらも所持をし、売りに行く。
「……」
またこちらからも声がしたと質屋からほど遠くなる回り道をしながら。