血よりも愛すべき最愛


「ここも潮時か。国(土地)が栄えれば、家畜(牛)も肥える。肥えた物は残飯に等しい。何よりも、『女王』が僕を狩りたがっている」


やれやれと、肩を竦めた後に、落とした杖を拾う男。二度ほど地を叩き、銀の時計を見つめた。


「一日に一度。決まって、深夜二時。一日に二十人は死のうこの国で、僕の殺人(食事)は、そう“取るに足ることなのかね”?」


三日月の唇。寒気がするほどの『夜空』は笑う。


「“君ら”が庭に生えた雑草(目障り)を狩る中で、僕は雑草を摘んでいるだけなのだよ。――ふむ、それでもなお、僕が怖いか。震えが銃口(マスケット)に出ておいでだが?」


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