血よりも愛すべき最愛
右の醜貌、左の美貌。『彼女』の経緯
――
その女を抱けば、死ぬ。
『彼女』がそう呼ばれ始めたのは、10才の時。初潮を迎えし時からほどなくしてだった。
まず、『彼女』の身近にいた存在(男)が亡くなった。
『彼女』の父親である。
深夜、就寝中の『彼女』を、父親は襲った。
『彼女』の悲鳴を聞きつけた母親により、未遂に終わったが、泣く『彼女』を見、父親は後悔の念にかられ、自殺をする。
娘を襲い、自殺した父親がいる家などとの風潮があろうとも、当時、貧しかった母娘はその町に住み続けていた。
父親のことがあって以来、娘は男が怖く、母親は精神的に参ってしまうも、二人は仲睦まじく暮らしていたが――平穏は毎日のように脅かされた。