ある日のできごと
タイトル未編集

改札を抜ける際に横目で構内の時計を見た。

午後5時を少しだけ過ぎている。

いつも通りのことだけれど、完全に遅刻だった。


私の通っている予備校は、すべての私立高校の下校時間を配慮して、午後4時から講義が始まる。

私の家から予備校までは電車一本で30分も掛からないというのに、ズボラな性格が邪魔をして、私はいつも遅れて校舎へ入って行く。

外はすでに陽が落ちていた。
寒い風から逃れるようと、サラリーマンたちは皆、足早に通り過ぎて行く。

ティッシュ配りのバイトのお兄さんは、やけっぱちになりながら、通行人の胸へと強引にティッシュを押しつけていた。

人の往来が激しい駅前の光景を目にして、私は「しまった!」と思った。

急いでいた為に、出口の番号を確認せず階段を上ってしまったせいで、いつもと違う場所に出てしまったのだ。

普段出るのは4番出口。
今日出て来たのは9番出口。

丁度駅裏と駅表という、当てずっぽうな間違い方。

今から構内を突っ切って走れば、次の講義くらいには間に合うかもしれない。
ため息を溢しつつ、私はブーツの踵をコツンと鳴らした。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop