倫敦市の人々
その身が、何者かによって引き止められた。

僅かに水の中、目を開ける。

目の前に、必死でもがくロンの姿があった。

ジャックの腕に牙を立てないように噛み付き、四肢を掻いて何とか浮上しようとしている。

(ロン…俺を助けようというのか…?)

朦朧とする意識の中、ロンの意図を悟るジャック。

水中で水掻きするロンの姿は、お世辞にも泳ぎ達者なようには見えない。

犬の癖に下手な犬掻きもあったものだ。

察しの通り、ロンは満足に泳ぐ事が出来なかった。

< 103 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop